― 漢方薬は抗がん剤の副作用を軽減できるか ―

 

はじめに

前回は、がんの漢方治療と題して、以下のような項目でご説明しました。漢方薬が、がん治療に果たす役割をご理解いただけましたでしょうか。

1.「がん」に対する漢方薬の役割
2.患者さんの状況によって適応する漢方薬は異なる
3.状況による漢方薬の選び方
4.煎じ薬が使用できる場合
5.抗がん生薬
6.煎じ薬を患者さんが飲むということ
7.漢方薬が癌を悪化させることがあるか
8.食べられなくなったら

今回は、西洋医学における標準治療である抗がん剤治療の副作用を、漢方薬がどのぐらい防げるか、その結果、QOLをどのぐらい保てるかについて考えて見ましょう。実は、このような漢方薬の働きは、世界的に注目されており、さまざまな雑誌に沢山の論文が掲載されています。ここでは、副作用を軽減する支持療法としての漢方薬はどの程度信頼できるかということを、これまでに発表された論文を見ていくことによって明らかにしていきましょう。

皆さんは、抗がん剤にどのような種類があるかご存知でしょうか。また、それぞれの抗がん剤にさまざまな副作用があるかご存知でしょうか。

抗がん剤には、以下のような種類があります。大きく「細胞障害性抗がん剤」「分子標的薬」「ホルモン薬」「サイトカイン」の4つの分類に分けて論じるのが一般的です。

 

1.    細胞障害性抗がん剤

細胞分裂を阻害することによってがん細胞にダメージを与えるタイプの抗がん剤です。細胞分裂中の細胞はがん細胞、正常細胞を問わず影響を受けるので、細胞分裂の盛んな組織である口腔粘膜や消化管粘膜、毛根細胞などは薬剤の影響を受けやすく、嘔吐や脱毛などの副作用が多くみられます。薬剤は細胞分裂の阻害の仕方によって、さらにいくつかの種類に分けられています。

①    アルキル化剤

マスタードガスの研究から開発されたといわれる、細胞障害性抗がん剤の代表的な薬物です。アルキル基をがん細胞のDNAに付着させ、2本のDNAを異常な形で結合させて、DNAのコピーができないようにします。細胞への攻撃力が強く、正常細胞にも影響を及ぼし、副作用が強くあらわれることの多い薬です。増殖スピードの遅いがんや、白血病、悪性リンパ腫などにも効果が認められています。

代表的な薬に、メルファラン、シクロホスファミド(商品名エンドキサン)、イホスファミド、ダカルバジン、ニムスチン、ブスルファンなどがあります。

②    代謝拮抗剤

がん細胞が分裂・増殖する際に、核酸の材料となる物質と化学的構造が似ている薬(たとえばフッ素が1つ付いているなど)で、がん細胞のDNAの合成を妨げ、核酸代謝を阻害して増殖を抑制する働きがあります。

代表的な「フルオロウラシル(5-FU)」は40年以上も前に開発された抗がん剤で、そのプロドラッグ(前駆薬)としてテガフール(商品名フトラフール)やカペシタビン(商品名ゼローダ)が開発されました。フルオウラシルとテガフールとの合剤である「テガフール・ウラシル(商品名ユーエフティ)」は良く使用されています。この系統の合剤としては、「テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(商品名ティーエスワンTS-1)」が良く知られています。

その他の代謝拮抗剤としては、メトトレキサート(リウマトレックスという名前で関節リウマチにも良く使用されます)、メルカプトプリン、シタラビン、ゲムシタビンなどがあります。ゲムシタビンはパクリタキセルと併用することによって、ある種のがんにより高い効果が得られるという報告があります。

③    植物アルカロイド

強い毒性のある植物の成分を薬に応用した抗がん剤で、大きく分けて、微小管阻害薬とトポイソメラーゼ阻害薬の2つの種類があります。いずれも、がん細胞のDNAに働きます。

微小管阻害薬には、「ビンカアルカロイド系」であるビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、「タキサン系」であるパクリタキセル、ドセタキセルなどがあります。

トポイソメラーゼ阻害薬には、イリノテカン、ノギテカン、エトポシドなどがあります。

ビンクリスチンには手足のしびれなど、イリノテカンなどには骨髓抑制や下痢などの副作用が知られています。

④    抗がん性抗生物質

抗腫瘍作用を持つ抗生物質です。がん細胞の細胞膜を破壊したり、DNAまたはRNAの複製・合成を阻害します。代表的な薬にマイトマイシンC、ブレオマイシン、アムルビシン、ドキソルビシンがあります。

⑤    プラチナ(白金)製剤

DNAの二重らせん構造に結合してDNAの複製を阻害したり、がん細胞を自滅(アポトーシスといいます)させる働きがあります。代表的な薬に、オキサリプラチン、カルボプラチン、シスプラチンなどがあります。

副作用には、嘔吐や吐き気のほか、腎障害、耳鳴り、手足のしびれなども見られます。

 

2.分子標的薬

がんや自己免疫疾患、臓器移植などの治療で、特有あるいは過剰に発現している特定の分子(たんぱくや遺伝子)を狙い撃ちにしてその機能を抑える薬剤の総称で、薬の接尾語に「・・・マブ(mab: モノクローナル抗体薬)」とか「・・・ニブ(nib: 阻害薬)」がついているのは、これらの薬です。がん細胞を狙って作用し、その増殖を抑えるため、副作用をより少なく抑えながら治療効果を高めると期待されています。2000年代初めから続々と開発されました。それぞれの薬の作用や副作用については、ホームページや書籍を参考にしてください。

EGFR抗体薬(セツキシマブ、パニツムマブなど)、EGFR阻害薬(アファチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブなど)

ALK阻害薬(クリゾチニブ、アレクチニブなど)

HER2抗体薬(トラスツズマブなど)、HER2阻害薬(ラパチニブなど)

血管新生阻害薬(ベバシズマブ、ソラフェニブ、スニチニブ、レゴラフェニブなど)

mTOR阻害薬(エベロリムス、テムシロリムスなど)

BCR‐ABL阻害薬(イマチニブ、ダサチニブ、ニロチニブなど)

膜状分化抗原標的薬(リツキシマブなど)

その他(デノスマブなど)

 

3.ホルモン薬

がんによっては特定のホルモンによって増殖が促進されることがあり、とくに性ホルモンが重要です。女性ホルモンであるエストロゲンに依存する乳がんには抗エストロゲン剤や、男性ホルモンからエストロゲンを作るアロマターゼという酵素を抑制するアロマターゼ阻害薬であるアナストロゾール(商品名アリミデックス)やレトロゾール(フェマーラ)などが用いられます。

前立腺がんに用いるビカルタミド(商品名カソデックス)は抗アンドロゲン剤で、アンドロゲン受容体に作用します。脳下垂体に作用するリュープロレリン(商品名リュープリン)は卵巣や精巣への刺激ホルモンが放出されるのを強力に抑制するので、乳がんでも前立腺がんでも用いられます。

 

4.    サイトカイン

サイトカインとは、免疫システムの細胞から分泌されるタンパク質で、多くの種類がありますが、インターフェロンやインターロイキン2などが代表的なものです。

インターフェロンは、リンパ球などの免疫細胞を活性化します。この作用によってリンパ球ががん細胞を破壊すると同時に、インターフェロン自体もがん細胞を直接的に破壊し、がんに対して効果を発揮するとされています。インターフェロンα(IFN-α)の製剤(商品名オーアイエフ、スミフェロン)があります。インターロイキンは、リンパ球の一種であるTリンパ球の活性化により抗がん作用を発揮します。インターロイキン2(IL-2)の製剤(商品名イムネース)があります。

 

がん治療におけるレジメンについて

投与する薬剤の種類や量、期間、手順などを時系列で示した計画書とその処方のことをレジメンといい、すでに多くのがんの治療のためにいくつものレジメンが開発されています。有名なものに、大腸癌に対する点滴治療であるFOLFOX、FOLFIRI、点滴と内服薬を組み合わせたXELOX、SOX、IRISなどがあります。

ここでは代表的なもののみ紹介しましたが、それぞれの抗がん剤の薬効とその製品名は、末尾に掲載しましたホームページに詳しく記載されていますので、ご覧ください。

さて、それでは、漢方薬が、抗がん剤の副作用に対していかに効果的に働くかを見ていきましょう。このような使い方を「支持療法」といいます。

 

1.    がん化学療法時の全身倦怠感、食欲不振、気分不良など

どのような抗がん剤でも、多かれ少なかれ副作用を伴います。これらに対して、補中益気湯が有効であるという報告があり1)2)3)、一般に臨床医の間では、化学療法を行っている患者さんにこの処方を投与することが広く行われています。同じように多用されている処方に十全大補湯があります。この処方は、白血球や血小板減少に対する効果と転移抑制効果が、動物実験で認められています4)

日本では、がんの化学療法時に、体力増強、食欲改善の目的で、補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯の3処方が一般的に多用されていますが、個別の症状に対しては、それぞれに適した漢方処方が存在しているのです。

 

2.    各種抗がん剤による副作用軽減に用いられる漢方薬

①    シスプラチン・カルボプラチンの副作用に対する漢方薬の効果
シスプラチンやカルボプラチンは、抗腫瘍効果が強く、現在の抗がん剤治療で中心的な役割を果たしていているプラチナ製剤(白金化合物)です。がん細胞の2本のDNA鎖と結合することでDNAの複製を妨げ、がん細胞を死滅させる働きがあります。これらの抗がん剤は、吐き気・嘔吐や食欲不振などの消化器症状が強く現れることが多く、また腎障害も多く現れます。

消化器症状に対しては、上記の補中益気湯、十全大補湯、人参養栄湯に加え、六君子湯などがよく用いられます。手足のしびれには進藤先生たちによる牛車腎気丸が有効であるという報告もあります5)

シスプラチン投与時の腎障害に対しては、沖本二郎先生たちの柴苓湯についての研究があります。肺がんの患者さんに対し、シスプラチンを投与する前日より柴苓湯エキスをl5日間投与した群とそうでない群を比較し、シスプラチンを投与した群では、腎機能の低下が少なく、柴苓湯はシスプラチンによる腎障害を軽減させることが示唆された、と述べておられます6)

また、カルボプラチン投与による骨髄抑制に対する十全大補湯の効果を調べた沖本二郎先生たちの研究があります。肺がん患者70例を対象に、カルボプラチン投与前日より十全大浦湯エキスを投与した群とそうでない群を比較し、その結果、血色素(ヘモグロビン)の減少が有意に抑制され、白血球と血小板の減少も有意に抑制されたと述べておられます7)

②    5FUなどの代謝拮抗剤の副作用に対する漢方薬

代謝拮抗薬は、少しだけ構造の違う核酸を投与することでがん細胞の増殖や分裂を停止させます。代表的な薬剤にフルオウラシル(5-FU)があります(ウラシルという核酸にフッ素が付いたもの)。また、そのプロドラッグ(前駆薬)としていくつかの薬剤が開発されています(ゼローダ、テガフールなど)。この薬剤の副作用の発現部位は、細胞増殖能の高い消化管粘膜と骨髓です。その結果、食欲不振、下痢、悪心、嘔吐、口内炎などの消化器症状、白血球減少などの骨髓抑制の症候が現れるほか、皮膚症状である手足症候群などが見られることもあります。

ここでは、山田卓也先生と大原毅先生たちの臨床研究を紹介しましょう。

山田先生は、胃がん術後患者94人を対象とし、全例に5-FUを経口投与し、十全大浦湯併用群と非併用群を無作為に分けて、ランダム化比較試験を施行しました。その結果、ステージⅢとⅣの症例では、十全大補湯併用群で有意に生命予後が延長していたことを報告しておられます8)

また、大原先生らは、胃がん、大腸がん、乳がん、その他のがんでテガフールを投与されている計l78人の患者を、補中益気湯併用群、後述する人参養栄湯併用群、テガフール単独群の3群に分けてランダム化比較試験を行いました。その結果、自覚症状、他覚所見、および全身改善度のいずれも、漢方薬投与群は対照群(非投与群)に比べて有意な改善が認められたと述べておられます。

テガフールの副作用は、いずれの群でも観察されましたが、漢方薬投与群では重篤ではありませんでした。また、補中益気湯投与群では食欲不振の改善が認められ、人参養栄湯群では悪心、嘔吐、便通不良、意欲低下、疲労倦怠感の改善を認めたとのことでした9)

③    イリノテカンの副作用に対する漢方薬

イリノテカン(CPT-11)は、日本で開発された植物アルカロイドの誘導体です。広い抗腫瘍スペクトラムを有し、単剤投与以外に、FOLFIRI(フォリン酸 + 5-FU + イリノテカン)療法など他剤との併用も多く行われています。副作用には、下痢、白血球減少などが見られます。下痢は、投与直後に現れる場合(急性)と、一定の期間をおいて現れる場合(遅発性)があり、前者は一過性ですのでそれほど問題になりませんが、後者は脱水症状で致命的になる場合もありますので、注意を要します。このうち、白血球減少に対しては、ヒト顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与によって改善がはかれるようになりました。そして、下痢と全身倦怠感に対しては、漢方薬の併用がある程度有効であることが分かっています。

とくに遅発性の下痢に対しては半夏瀉心湯が用いられています。森清志先生らは、進行非小細胞肺がんに対し、標準治療であるシスプラチンとイリノテカンの併用療法を行い、とくにイリノテカンによる遅発性の下痢を予防する目的でツムラ半夏瀉心湯 7.5g/日を投与しています。その結果、半夏瀉心湯投与群は非投与群に比べ、有意に下痢の改善が見られたと報告しています10)11)

④    タキサン系薬剤の副作用に対する漢方薬

植物アルカロイドであるタキサン系薬剤は、「微小管脱重合阻害薬」という難しい名前に分類される薬です。細胞分裂の際に形成される「微小管」が重合した状態を安定化させ(微小管の脱重合を起こらなくさせ)、これによって細胞の有糸分裂を停止させ、細胞死へと導く作用があります。

タキサン系抗がん剤にはパクリタキセルとドセタキセルがあり、このうちパクリタキセルは、セイヨウイチイ(Taxus brevifolia)の樹皮成分から見つかった抗がん剤で、単独あるいは他の抗がん剤との併用で用いられています。タキサン系抗がん剤の副作用では、悪心・嘔吐などの消化器症状は少ないのですが、白血球減少などの骨髓抑制が強く、脱毛は必発であり、パクリタキセルでは、このほかに高率(35.7%)に手足の先のしびれ感などの末梢神経障害や筋肉痛・関節痛を発現します。

パクリタキセルによる末梢神経障害や筋肉痛・関節痛に対しては、牛車腎気丸や芍薬甘草湯がその軽減に有効であるという報告がいくつかあります。日高隆雄先生らは、パクリタキセル・カルボプラチン併用化学療法を開始した漿液性卵巣がん患者のうち、第1サイクルでNSAIDs(非ステロイド性抗炎症剤)を使用してもグレード2(鎮痛剤の内服を数回要する程度)以上の筋肉痛を認めた患者さん20 人を対象とし、筋肉痛に対する芍薬甘草湯の臨床効果を検討しました。第2サイクルでは初日からツムラ芍薬甘草湯エキス穎粒(7.5g /日・分3)を7日間、NSAIDsと併用投与しました。日高先生らは、独自に作成した痛みの5段階評価を用いて鎮痛効果を評価し、その結果、芍薬甘草湯を用いることで、経過中の筋肉痛の程度は有意に低下し、持続日数も有意に短縮されたと報告しています12)

 

以上、悪性腫瘍に対して用いられる抗がん剤の副作用を漢方薬が軽減できる、という例をいくつかお示ししました。ここに上げたものは、そのほんの一部に過ぎず、実際の臨床では、さらに多くの漢方薬が多種多様の状況に応用されています。それらについても、このシリーズで少しずつ取り上げていくことになるでしょう。

 

引用文献

1)    元雄良治. がん医療と漢方:. 小野 孝彦(編). 使ってみよう漢方薬, 107-112, 文光堂, 東京, 2015.

2)    泰 清志,ほか:補中益気湯の肺癌化学療法における副作用予防効果. Biotherapy 6:624-627, 1992.

3)    伏木 弘,ほか:抗癌剤の副作用軽減に対する補中益気湯の有用性について. 産婦人科漢方研究のあゆみ7 :72-75, 2000.

4)    Saiki I:A Kampo medicine “Juzen-taiho-to”-prevention of malignant progression and metastasis of tumor cells and the mechanism of action. Bio Pharm Bull, 23:677-688, 2000

5)    進藤吉明, ほか. 牛車腎気丸によるOxaliplatin関連末梢神経障害の軽減効果についての検討. 癌と化学療法35: 863-865, 2008.

6)    沖本二郎、ほか:シスプラチン(CDDP)腎障害に対するツムラ柴苓湯の効果. 診断と治療 79: 1497-1501, 1991.

7)    沖本二郎、ほか:抗癌剤の骨髄抑制に対するツムラ十全大浦湯の効果. 診断と治療81:2040-2043,1993.

8)    山田卓也:胃がんにおける5-FU経口剤と十全大補湯(TJ-48)の併用効果に関する無作為化比較試験. Prog Med 24:2746-2747, 2004

9)    大原毅, ほか:補中益気湯、人参養栄湯のテガフールとの有用性の検討. 薬理と治療 21:4423-4434, 1993.

10)    森 清志, ほか:進行性非小細胞肺癌のCisplatin, Irinotecan hydrochlorideに伴う下痢に対する半夏瀉心湯の有用性について. 癌と化学療法 25: 1159-1163, 1998.

11)    Mori K. et al.: A phase I study of irinotecan and infusional cisplatin with recombinant human granulocyte colony-stimulating factor support in the treatment of advanced non-small cell lung cancer. Eur J Cancer 33: 503-505, 1997.

12)    日高隆雄, ほか:Paclitaxel投与による筋肉痛に対する芍薬甘草湯の効果, 産婦人科漢方研究の歩み 17:79-83, 2000

 

参考になる本

がんについての本は多いのですが、ここで述べたようなことについて参考になるようなことを書いている書籍はあまり多くありません。抗がん剤による治療を受ける患者さんは、まず、自分に用いられる抗がん剤の種類を知り、その効果と限界、それに副作用などを知っておく必要があります。

ここでは、多くの情報の中から、患者さんの役に立つと思われるものをいくつか挙げておきます。インターネットのホームページも、うまく活用されることをお勧めします。

 

1.加藤隆佑『抗がん剤治療を受けるときに読む本』緑書房2015

bookこの本の最大の特徴は、何よりも「抗がん剤治療をうける患者さん」の立場に立って書かれているところにあります。抗がん剤治療を受ける目的をはっきりさせておくこと、副作用について正確な知識を持つこと、家族や周囲の人との愛情ある交流を欠かさないこと、体力をつけること・・・。医師とのコミュニケーションを良好に保つにはどうしたらよいか、毎日を出来るだけ前向きに生きていくためには心をどうコントロースすればよいか・・・。およそ、がんになった患者さんとその家族に必要なことが全て書いてあるといっても過言ではありません。

著者は、本職のがん治療だけでなく、心理療法や代替療法の達人であるようです。漢方薬のことについて書いてはありませんが、上に述べた漢方薬の効果を正しく知るためにも、この本を読むことをお勧めします。この本の著者はお医者さんなのに、何よりも、患者さんの視点で書かれていることが、本書の大きな特徴です。この本をお読みになった患者さんは、きっと心の安らぎを得ることが出来るでしょう。

 

2.抗がん剤の種類と副作用

http://www.anticancer-drug.net/

ここでは、現在使用されている抗がん剤を、ほぼ全て網羅し、分類に従って、各抗がん剤を詳細に解説しています。それぞれの薬の一般名と商品名を明記し、製品の写真も入れてあって親切です。それぞれの抗がん剤がどのような種類のがんに効くのか、副作用はどのようなものがあるのか、など懇切丁寧に書いてあるので、患者さんは、ご自分に用いられている抗がん剤についてすぐに知識を得ることが出来ます。

 

3.がん薬物療法(抗がん剤治療)のことを知る―がんになったら手にとるガイド

http://ganjoho.jp/hikkei/chapter3-1/03-01-05.html

これは、国立がん研究センターがん対策情報センターが提供する膨大な「がん情報」のうちの1部分で、化学療法、分子標的治療、ホルモン療法(内分泌療法)の3つの薬物の特徴が、副作用も含め、分かりやすく書いてあり、治療を受けるときの注意も細かく記述してあります。何か異常が現れたら、すぐに担当医や看護師に知らせてくださいというところが多いのは、患者さん自身が対応することが困難なところが多いからでしょう。このホームページは、抗がん剤のことだけでなく、がんに関するほぼあらゆることを解説しているという点で、非常に有用です。

 

7. がんの漢方治療(2)